予防の重要性
予防歯科とは、虫歯や歯周病になってから治療するのではなく「トラブルが起こる前に防ぐ」という考え方です。
TVやCMでもよく耳にするようになった「予防歯科」。虫歯や歯周病は、トラブルが起きてから治療するのでは、この先の生涯を共にするお口とその健康は守りきれません。「未然に防ぐ」ことでしか、他に代わりのないあなたのお口の健康は守ることができません。そのためには、歯科医院でのプロフェッショナルケアと、自宅で行うセルフケアが大切です。
セルフケアだけでは、歯垢や歯石を完全に取り除くことができません。歯科医院で、定期的にPMTCや口腔内診察などの検診を受けていただき、虫歯や歯周病にならない健康な歯を維持していきましょう。残念なことに日本は先進諸国の中でも歯に対する意識が低く、予防歯科の概念がまだまだ浸透していません。トラブルが起きてから歯科医院に行くのではなく、その前に受診する。定期的にメインテナンスを受ける。毎日のセルフケアを怠らないなど、積極的に歯を守っていく姿勢が予防歯科の特徴です。虫歯になったり歯を失ったりすると生活の質が低下してしまい、また治療に時間と経費がかかるため、それを防ごうという考えから生まれました。生涯にわたり自分の歯を20本(歯)キープすることは、食べ物を噛む役割だけではなく心身共に健康に過ごせるポイントになっていることがわかってきました。8020(ハチマル・ニイマル)運動を聞いたことはありませんか?80歳まで、20本(歯)を保とうという運動が推進されているのです。
マタニティの予防ケア
妊産婦の予防歯科をご存知ですか?妊婦さんを対象にした予防歯科のことで、お母さんに出産前後の歯の健康についての知識を身に着けてもらうことで、出産のリスクを高めないこと、赤ちゃんの虫歯を予防し口の健康を守ることを主眼に置いています。
妊娠中に気をつけたいことの一つとしてお口のケアがあります。近年、妊娠中の歯周病(妊娠性歯肉炎)は、早産および低体重児出産へのリスクが高まることがわかってきました。これらは妊娠中に増加する、女性ホルモンのエストロゲンが大きく関わっているといわれています。エストロゲンが歯肉を形作る細胞を標的にし、また歯周病原細菌の増殖を促すことが知られています。つまりお口の中が、歯茎の炎症を起こしやすい環境になり、歯周病が非常に進行しやすい状況が整ってしまうのです。妊娠中は唾液の量が減ることも後押ししています。妊娠中期から後期にかけて女性ホルモンが増加するため、さらにリスクが高まります。出産とともに元には戻りますが、清潔な状態を保つことで炎症を抑えることができますので、プラークコントロールを心がけてください。歯周病は予防可能な疾患ですので、赤ちゃんのために確実な歯周病予防を行いましょう。
また、赤ちゃんの口内には虫歯菌や歯周病菌はありません。それなのに虫歯や歯周病になるのは、口移しや食具を共有することによって家族の細菌が感染するためです。また妊娠すると、つわりによって歯磨きがしにくくなり虫歯になるリスクが高まります。妊産婦の予防歯科では、そうした知識を知ってもらい、必要であれば出産前に虫歯や歯周病の治療をしてもらうとともに、子どもに歯磨きをきちんとするなどの正しい生活習慣を身に着けてもらうよう指導します。
お子様の予防ケア
お口のスキンシップを通してお子様に虫歯菌がうつり、虫歯に感染してしまうのです。虫歯菌に感染しやすい時期は、生後1歳7ヵ月~2歳7ヵ月の間です。予防策としましては、この感染しやすい時期に、お子様と同じ箸やスプーンを共有しない、離乳食の際に咬み与えをしないなど、お口のスキンシップを控えることです。そうすることで成長した時の虫歯の本数を少なくすることができるのです。
また虫歯菌がうつってしまったかどうかなんて分からないですよね。うつさないことと同時に、日頃の歯ブラシ習慣も大切になってきます。小さい時は一緒に歯磨きを行うとともに、ちゃんと磨けているか確認と仕上げを、ご両親でしてあげましょう。また、小児歯科で定期検診やブラッシング指導を受けるのもオススメです。
お子様への虫歯菌の感染に十分注意しながら、成人まで虫歯のない健康な歯を維持することができた場合、一生虫歯のない健康な歯でいられる可能性が高いということがいえます。弱い歯になってしまうことで、将来選べる夢や職業が限られてしまうこともあります。ご両親としては、お子様の可能性を、選択肢を広げてあげることも大切ですよね。何より痛い思いをせずに済むのです。こんなにいいことはないのではないでしょうか。小さい頃から虫歯にならない習慣を身につけていきましょう。
成人の予防ケア
大人になるにつれ、虫歯よりも歯周病にかかっている人が増えてきます。大人になるまで虫歯ゼロで安心していた人も、油断はできません。
歯周病は虫歯とは全く違う病気です。虫歯は歯がやられてしまう病気ですが、歯周病は歯を支える骨がやられてしまう病気です。原因となる細菌も全く違うものです。
それまで虫歯ができずに「自分は歯が強い」と思っていた人でも、歯周病によって全て歯を失ってしまう、ということは決して珍しくありません。歯周病は虫歯とは違って複数の歯が一気にやられることが多いので、次々に歯を失いやすいのです。のちになって歯を失わないためには、成人以降は、虫歯に対するケアはもちろんのこと、歯周病に対する予防ケアを中心に、定期的にしっかりと行う必要があります。
プロケアのクリーニング(PMTC)
PMTCとは
歯科衛生士や歯科医師(Professional)が、専用の器具(Mechanical)を用いて、歯の清掃(Tooth Cleaning)を行うことを、頭文字をとってPMTCといいます。ご家庭での通常の歯磨きでは、こびりついた汚れ(バイオフィルム、プラーク、歯石、着色など)を落とすことはできません。歯科医院で専用の器具(ブラシ、カップ、チップ)と専用のペーストを使用してクリーニングを行うことで、徹底的に汚れを除去し、歯の本来の白さを取り戻します。
PMTCの効果と実感
PMTCは、歯をきれいにすると共に、虫歯や歯周病を予防し、長く健康な歯を保つためにとても効果的です。継続的に行っていただくことで、美しく健康な歯と歯肉を維持していただくことができます。(3~6ヵ月に一度行うことをお勧めします)
PMTCの効果
- 口腔内の衛生を保ち虫歯や歯周病を予防します
- フッ素の効果で虫歯になりにくい歯質をつくります
- 光沢のある歯本来の美しさを保ちます
PMTCをしたことによる実感
- 歯面がつるつるになります
- 口腔の汚れによる口臭がなくなります
治療の流れ
- 歯面の汚れ(プラーク)を
落とします
- 電動歯ブラシのような機械を使って、歯面にこびりついている汚れを落とします。お子様にはプラークを赤く染め出し、ブラッシング指導を行ってから機械を使用したクリーニングを行います。
- 歯の間のお掃除をします
- フロスや歯間ブラシを使って汚れを落とします。子どもも大人も、目に見える歯面より、見えない歯と歯の間からの虫歯が危険なのです。
- フッ素塗布をします
- 高濃度のフッ素を定期的に取り入れることで、より沢山のフッ素を取り込むことができ、歯面の強化に繋がります。着色や汚れのつきかたなど、口の中の状態によって異なります。
自宅で出来る予防ケア
日頃の生活習慣から予防ケアを取り入れましょう。特に下記3つがポイントとなります。
- フッ素を口内に残す
- ・フッ素配合歯磨き剤を使う
・すすぎ過ぎない
- 歯垢を残さず落とす
- ・歯ブラシで歯の一本一本を丁寧に磨く
・デンタルフロスを使って隙間の歯垢を取り除く
- 細菌を増やさない
- ・デンタルリンスなどの殺菌剤で口内の隅々まで洗浄する